田中義郎の経営教室

2016年11月から「田中義郎の経営教室」をスタートさせました。中小企業 (小規模企業を含む) の経営に役立つ情報をさまざまな角度からお届けする予定です。ご愛読賜れば幸いです。
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5年後➁ 分断社会を乗り越える(企業も個人も)

2017年5月14日

   前回、時代は格差社会から一強九弱の時代へ、さらに分断社会へ向かっていると述べた。
  社会構造の変化は中小企業にも個人にも襲いかかる。 
       (前回はこちらからご覧ください)
   分断社会は一般的に富裕層と貧困層の分断と受け止められているが、ここで取り上げるのは
  「知」の分断である。
   前回記述させて頂いたが、知の蓄積がなければ企業も個人も社会に貢献できず「九弱」を余儀
  なくされる。企業は徐々に進路を断たれ、個人は長い茨の道を歩まなければならない。

  今やるか、先送りするか。

   今やるか先送りするかの選択は、一強か九弱かを選択する意思決定である。変革期には一度
  立ち止まり、来るべき時代に備える時間が必要である。
   下図で自社(自分)の立ち位置を確認して頂きたい。

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   大企業にも弱みがある。A・Bゾーンでのビジネス(巨大マーケット)は、常に厳しい競争に
  さらされている。人も設備も抱えている。外部環境の急変や需要の変動、技術開発などにスト
  レートに影響を受ける。大企業と言えども、一度のつまずきが会社の命取りになる時代になっ
  た。
   これに対し中小企業には大きな強みがある。Cゾーンは中小企業が独占できるマーケットで
  ある。大企業の参入はまずない。Cゾーンで中小企業の良さをフルに発揮すれば独自のビジネス
  の展開が可能である。コストダウンや販路開拓など小手先の改善に努めても、A・Dゾーンから
  の脱皮できない限り多くを望めない。九弱から逃れられず、徐々に追い込まれていく。

   「一強」のキーワードは「知」である。知から新しい付加価値を創出できるかどうか。今後は
  (今までもそうであったが)知のレベルが経営の質や中期的な業績に大きな影響を与える。
   企業だけでなく個人にも同様のことが当てはまる。能力や魅力で社会的地位が決まる時代に
  なった。突出した能力がものを言う時代になった。社会の流れや関心が「財」(おカネ)から「知」に
  シフトし、今後も加速していくからだ。財は自助努力だけでは簡単に手に入らないが、知は自助
  努力で手に入れることができる。

   われわれはさまざまな情報を駆使して、真に欲しいものだけ手に入れることができるようにな
      った。マーケットはどんどん細分化され、サイズは極小の方向に向かっている。マーケットが求
      めているのは、知から生み出される「独自性」であり、量から質への転換である。
   地道な努力で知を蓄える中小企業にとってチャンス到来である。一方、知に無頓着な企業、量
  の拡大を目論む旧態依然の企業は、どんどん苦境に追い込まれていく。

   今後、知の格差は拡大の一途をたどる。この「時代の風」を追い風にするか、向かい風にする。
  その分岐点になるのが、今やるか、先送りするかの意思決定である。明暗はここで確実に分かれ
  る。

  経営者はマネジメントという「鎧」を脱ぎ捨てる

   中小企業経営にマネジメントは要らない。大企業においては、さまざまな人が係わっているの
  で行動規範としてマネジメントが必要であるが、大企業の真似をする必要は何もない。
   中小企業は、経営の「軸」をマネジメントから「人」に転換しなければならない。経営の軸を目先
  の業績や経済性の追求から「人」(経営者・社員)に転換しなければならない。
   マネジメントという鎧を脱ぎ捨てると、新しい天地が広がる。人の大切さに気付く。企業の土
  台、組織の土台は人(の能力)に左右されていることに気付くからだ。
   企業の中長期的発展は「土台」によって決まる。土台とは収益の源泉になる企業の「根本」であ
  る。企業の業績は企業の根本から生み出された付加価値によって決まる。付加価値を生みだすの
  は人である。収益は人や組織の質(能力)が生み出すのである。

   経営者が最優先しなければならないのは、新たな付加価値を創出する「知」の蓄積である。マネ
  ジメントの学習ではない。経営の「軸」は人である。最優先すべき経営者の仕事は知の蓄積であ
  る。
   しかし現状は違う。
   圧倒的多数の経営者は目先の業務に追われている。だが目先の業務がなぜ過多になるのか、そ
  の原因は究明されていない。目先の売上を繋ぎ合わせ、何とか業績を維持できたとしても企業の
  発展に繋がらない。しかし、経営者は発展を見込めない目先の業務に翻弄されている。この悪循
  環をいかに断つか。今、中小企業に突き付けられているこの最大の課題をクリアしなければ発展
  の道は閉ざされる。

  結果優先か、プロセス優先か

   課題解決への手がかりは、結果からプロセスへの視点の転換だろう。
   簡単な一例を示す。
   5000万円を売り上げた会社がある。前年比20%の増収だったと仮定すると、結果優先では快
  挙と判断される。
   プロセス優先では5000万円にいたる過程を検証してからの評価になる。
   5000万円がA・Dゾーンで達成された売り上げか、それともCゾーンか。前期と比べA・D
  の割合が増加したのか、減少したのか。また、Cの変化はどうか。
   記述した通り、Aゾーンは地獄、Dゾーンは終焉を迎えるマーケットである。5000万円が
  A・Dゾーンで100%確保されていれば過当競争から逃れられない。提供する商品・サービスは
  コモディティそのものであり、目先の増収に関係なく確実に衰退に向かう。

   併せて、プロセス検証過程で、当社の最優先すべき課題はCゾーンへの転換であることに気付
  く。販路開拓などのマネジメントの手法で売上拡大を図っても、Aゾーンからの脱皮は不可能で
  あることに気付く。優先順位が明確になれば次の一手も明らかになる。

   物理的に何かを動かしたり加工しても、新しい付加価値を創り出すことはできない。新しい顧
  客を開拓しても提供している商品・サービスがコモディティであれば長続きしない。他社と同じ
  努力をしているだけでは月並みの付加価値しか創出できず、A・Dの地獄のゾーンから脱皮でき
  ず過当競争に明け暮れるしかない。
   
   今、求められているのは「独自の価値」の創出である。知の蓄積を図り、Cゾーンへの転換を図
  るための自助努力である。
   どのような自助努力が必要か。どうすれば知の蓄積ができるのか。Cゾーンへの転換は具体的
  にどのような取り組みが必要なのか。次回、明らかにしたい。
                     (次回:5年後③~いかにしてCゾーンを手に入れるか)